皇居三の丸尚蔵館「花鳥風月ー水の情景・月の風景」展
今年2024年9月10日(火)から10月20日まで、皇居三の丸尚蔵館にて「花鳥風月ー水の情景・月の風景」展が開催されている。
4ページのパンフレットには表紙に
裏表紙に
とある。
いずれも名品であり、期待が高まる。
東京駅丸の内側から徒歩で大手門に向かう。
皇居はやはり観光客にも人気で、海外からのお客さんも多い。
大手門を入って皇居丸の内尚蔵館へ向かう。
皇居丸の内尚蔵館については <77>皇居で見るパリ万博 でご紹介したのでそちらをご覧いただきたい。
現在のところはまだ工事中であり、2026年に全館開館を予定している。
今回の展覧会でやはり目を引くのは伊藤若冲(1716-1800)の国宝『動植綵絵』のうち『梅花皓月図』であろう。
若冲らしく緻密な筆致である。
これは『動植綵絵』30幅のうちの1幅、ということになる。
そして万博関連の作品も展示されている。
川之邊一朝『石山寺蒔絵文台・硯箱』
ひとつは川之邊一朝(かわのべ いっちょう 1831-1910)の『石山寺蒔絵文台・硯箱』(1899)である。
解説によると、次のようにある。
制作年は1899年なので、翌年1900年パリ万博に出展するために制作されたものだろう。
図録解説には
とある。
精巧に作られた素晴らしい作品である。
濤川惣助『七宝墨画月夜深林図額』
もうひとつは、濤川惣助の『七宝墨画月夜深林図額』(1899)である。
解説には次のようにある。
図録解説には以下のように説明がある。
濤川惣助については <16>「重要文化財の秘密」展 東京国立近代美術館 や <23>明治美術狂想曲(静嘉堂@丸の内) でご紹介した。
「重要文化財の秘密」展に出展されていた濤川惣助の作品『七宝富嶽図額』(1893年作。2011年重要文化財指定。)は1893年シカゴ万博に出品されたものであった。
この作品『七宝墨画月夜深林図額』は水墨画のような表現を七宝で見事に表現している。300種類以上の釉薬が用いられているとのことだ。
上村松園《雪月花》
さて、上記パンフレットの表紙に紹介されていたのが上村松園(1875-1949)の《雪月花》三幅対である。
この作品は1937年作で、万博に出品されたという説明はない。
しかし上村松園はシカゴ万博に出品した女性作家であった。しかも最年少での万博出品であった。
上村松園といえば、筆者の世代は記念切手で記憶している。
上村松園の『序の舞』が1965年切手趣味週間の10円記念切手として発売されていた。
味岡京子氏の論文「1893年シカゴ万国博覧会「女性館」への日本の出品」によると、このシカゴ万博では日本の女性作家の作品として油彩画3点、日本画(水彩画に分類)11点が「女性館」へ出品された。
この日本が11点のうちの1点が上村松園作のものだった。
またそのうち日本画のうち4名が賞牌を授与されている。
しかし、上村松園はその中には入っていないようだ。
万博における「女性館」は1876年フィラデルフィア万博が最初のものではないかと思われる。
このフィラデルフィア万博では、合計250館にもおよぶパビリオンが建てられたが、その一つに「女性館」があった。
この「女性館」こそ、フェミニズム運動の拠点であり、エリザベス・デュアン・ギレスピー(1821~1901)というベンジャミン・フランクリンの曾孫が代表をつとめた「女性百年祭実行委員会」によって企画されたパビリオンだったのである。
「女性館」は、国でもなく、自治体でも企業でもない、今でいうNPO非営利団体)的な、市民の有志によるパビリオンだった。
その流れをついだ1893年シカゴ万博の「女性館」に、日本の女性作家たちも参加し、その素晴らしい作品で日本の女性の存在感を示したのではないだろうか。