<25> 2027年認定博の開催地はセルビア・ベオグラードに決定!

2027 Serbia
セルビアの国旗 National Flag of Serbia

第172回BIE総会

去る2023年6月20日〜21日(水)、第172回BIE総会が開催された。

BIEとは博覧会国際事務局のことであり、パリに本部を置く万博に関するすべてがそこで決められるという国際組織である。もちろん日本も加盟国である。ちなみに日本のBIE加盟は、1970年大阪万博開催5年前の1965年だ。

今回の第172回BIE総会には179カ国のBIE加盟国が参加した。

BIEのサイトを確認すると、現在は179カ国が加盟国となっているので、全加盟国が参加したことになる。ちなみに、昨年2022年3月現在では170カ国が加盟だったので、この1年余りで9カ国が増えたことになる。

BIEのロゴ
The Bureau International des Expositions (BIE) logo.svg

さて、今回の議事としては、下記のようなものがあった。
(以下の情報はBIE公式ホームページに基づく)

1.今後の博覧会に関する進捗報告

2.2030年万博の候補者によるプレゼンテーション

3.2027/28年の認定博の開催地に関する選挙

1.今後の博覧会に関する進捗報告

BIEの4つの委員会(管理予算委員会、執行委員会、規則委員会、情報通信委員会)からの最新情報の報告があった。

また、2025年に開催予定の大阪・関西万博の組織委員会から、最新情報が報告された。

日本国の万博政府代表の羽田浩二氏からは、これまで153カ国と5つの国際機関が参加を表明したことが報告された。

また、石毛博行事務総長からはいくつかのパビリオンの紹介や、会場の進捗状況の報告があった。

2.2030年登録博の候補者によるプレゼンテーション

これについては、特に筆者は注目していた。

先日の「<4>フィンランドのNATO加盟のニュース」のブログでご紹介したように、2030年登録博(5年に一度の大規模な万博、2030年は2025年大阪・関西万博の次の登録博)の開催権については、当初、5カ国が手を挙げており、激しい招致合戦が繰り広げられていた。

その5カ国とは、ロシア(開催都市・以下同:モスクワ)、韓国(プサン)、イタリア(ローマ)、ウクライナ(オデーサ)、サウジアラビア(リヤド)である。

周知のように、2022年2月24日、ロシアがウクライナ侵攻を始めた。ロシアもウクライナも2030年登録博の開催候補国であった。

戦争は長引き、今も続いている。一刻も早い停戦が望まれる。

2022年5月23日、ロシアのウクライナ侵攻開始から3ヶ月たった時点でのBIE発表によると、ロシアは2030年登録博への立候補を自発的に取り下げる決定をした、とある。

しかし、ウクライナはまだ招致活動を続けていた。

ウクライナの万博計画は下記のようなものであった。

開催テーマ:「ルネッサンス、テクノロジー、未来(Renaissance. Technology. Future
開催場所オデーサ
開催期間203051日から1031日まで

立候補している国、都市へはBIEが調査団( BIE Enquiry Mission)を出すことになっている。調査団は、候補地の準備状況を確認し、その万博がBIEからみて規定にあっているか、実行可能であるか、ということをチェックする。

ウクライナ(開催地はオデーサ)には3月にBIEの調査団が入った。調査団はBIEの「規則委員会」のアルドウィン・デッカース委員長がを団長としてウクライナに派遣された。

もちろん、その他の韓国(プサン)、イタリア(ローマ)、サウジアラビア(リヤド)にも調査団は入っている。

そして、今回のBIE総会では、投票の結果、3つの候補地が継続検討されることが発表された。

その3カ国(3都市)とは、韓国(プサン)、イタリア(ローマ)、サウジアラビア(リヤド)であった。

BIEの発表には特に触れられていないが、ウクライナ(オデーサ)は外されたことになる。

やはり、戦争中であり、実現が難しいと判断されたのかもしれない。

ちなみに、残った3カ国の万博計画は下記のようなものである。

韓国
テーマ:「私たちの世界を変革し、よりよい未来に向けてナビゲートする」
(“Transforming Our World, Navigating Toward a Better Future”)
開催場所:プサン
開催期間: 2030年5月1日〜10月31日
イタリア
テーマ:「人々と地域: 再生、インクルージョンそしてイノベーション」
(“People and Territories: Regeneration, Inclusion and Innovation”)
開催場所:ローマ
開催期間:2030 年 5 月 1 日〜10 月 31 日
サウジアラビア
テーマ:「変化の時代:先見の明のある明日のためにともに」
(“The Era of Change: Together for a Foresighted Tomorrow”)
開催場所:リヤド
開催期間: 2030年10月1日〜2031年3月31日

この、2030年登録博の開催地については、今年2023年11月開催の第173回BIE総会で、加盟国の一国一票の原則に基づく無記名投票にて選出される予定である。

そして、今回の第172回BIE総会では、この3つの候補地が、それぞれプロジェクトのプレゼンテーションを行なった。

サウジアラビアからは、ファイサル・ビン・ファルハーン・アール・サウード外務大臣、韓国からは、韓国大統領ユン・ソンニョル氏、イタリアからは、閣僚評議会議長ジョルジア・メローニ氏が登壇した。

韓国はユン大統領自らが登壇するという力の入れようである。

さて、どうなるか、11月が楽しみである。

3.2027/28年の認定博の開催地に関する選挙

さて、これが今回のメインディッシュである。

「認定博」というのは5年に一度の大規模な「登録博」の間に1つだけ開催が認められるもので、専門的なテーマをもつ小ぶりな博覧会である。

具体的には、開催期間は最大3ヶ月以内(登録博は6ヶ月以内)、会場面積は25ヘクタール以内(登録博は制限なし)という制限がある。また、パビリオン等はすべて主催者が用意し、参加国にはパビリオンスペースが提供されることになっている。

最近開催された「認定博」は2017年にカザフスタンの首都アスタナ(現在は改名してヌルスルタン)で開催された万博である。アスタナ万博は「未来のエネルギー」をテーマに開催され、約400万人が来場した。

日本も「Smart Mix with Technology ―オールジャパンの経験と挑戦―」をテーマにパビリオンを出展し、73万人が来館した。

さて、今回の2027/28年の認定博については、5つの国/都市が立候補していた。

その5カ国とは下記の通りである。

アメリカ
テーマ:「健康な人々、健康な惑星:すべての人々のための健康と幸福」
(“Healthy People, Healthy Planet: Wellness and Well-Being for All”)
開催場所:ミネソタ
開催期間:2027年5月15日~8月15日
タイランド
テーマ:「生命の未来:調和のとれた暮らし、繁栄の分かち合い」
(“Future of Life: Living in Harmony, Sharing Prosperity”)
開催場所:プーケット
開催期間:2028年3月20日〜6月17日
セルビア
テーマ:「人類のための遊び:すべての人のためのスポーツと音楽」
(“Play for Humanity: Sport and Music for All”)
開催場所:ベオグラード
開催期間:2027年5月15日〜8月15日
スペイン
テーマ:「都市の時代:持続可能な都市に向けて」
(“The Urban Era: towards the Sustainable City”)
開催場所:マラガ
開催期間:2027年6月5日〜9月5日
アルゼンチン
テーマ:「自然 + テクノロジー = 持続可能なエネルギー。人類にとっての実行可能な未来」
(“Nature + Technology = Sustainable Energy. A viable future for humanity”)
開催場所:サン・カルロス・デ・バリローチェ
開催期間:2027年2月1日〜4月30日

今回の第172回BIE総会では、6月21日に、各国のプレゼンテーションに引き続き、投票が行われた。
投票は、加盟国の一国一票の原則に基づく、電子投票を使用した無記名投票にて行われる。
また、勝利に必要なのは、「3分の2」である。

必要な「3分の2」を獲得できた国がなかった場合は、投票数が最も少なかった国を除外して、第2回目の投票が行われる。そして、以下同様に続く。

今回は、最初の3回でどの国も3分の2の投票を得ることができなかったので、トップ2で決選投票が行われた。結局、今回は4回の投票が行われたことになる。

それぞれの投票結果は下記の通りである。

<第1ラウンドの結果>
アメリカ – 19
タイ – 16
セルビア – 54
スペイン – 42
アルゼンチン – 8
棄権 – 1

<第2ラウンドの結果>
アメリカ – 21
タイ – 15
セルビア – 69
スペイン – 48
棄権 – 1

<第3ラウンドの結果>
アメリカ – 23
セルビア – 74
スペイン – 53
棄権 – 2

<4回ラウンド結果>
セルビア – 81
スペイン – 70
棄権 – 3

ご覧のように、第172回BIE総会では、4回の投票の結果、セルビア・ベオグラードを選出した。

セルビアの国旗
National Flag of Serbia

実は個人的には、アメリカに注目していた。

万博のメッカだったアメリカ

アメリカといえばニューヨーク万博やシカゴ万博など万博史に名を残す偉大な万博を手がけてきた、フランスと並ぶ万博のメッカといってもいい存在である。しかし、実はアメリカと万博の関係は最近にいたるまでいろいろと紆余曲折があった。その辺りを振り返ってみたい。

19世紀後半、アメリカでは主だったものだけで1853~54年ニューヨーク、1876年フィラデルフィア、1893年シカゴ、と3回の万博が開催されている。20世紀になると1901年バッファロー、1904年セントルイス、1905年ポートランド、1915年サンフランシスコ、1926年フィラデルフィア、1933/34年シカゴ、1939/40年サンフランシスコ、同じく1939/40年ニューヨーク、1962年シアトル、1964/65年ニューヨーク、1968年サンアントニオ、1974年スポーカン、1982年ノックスヴィル、1984年ニューオリンズと多くの万博が開催されている。20世紀の万博はアメリカが席巻したといってもいいだろう。

アメリカは2001年にBIEを脱退していた!

しかし、1984年以降アメリカでは万博は開催されていない。何があったのか。さらに、アメリカは、1968年5月24日から加入していたBIE条約(国際博覧会条約)からも2001年4月27日に脱退していた。なんと20世紀万博のメッカ、アメリカはBIEから脱退していたのだ。そのため、その後アメリカでは万博は開催されておらず、アメリカの万博への関与は他国で開催される万博への出展ということに限られていた。

しかし、紆余曲折あったのち(詳しくは、拙著『万博100の物語』80話〜81話ご参照)、2017年5月10日、アメリカはBIEに復帰した。そして、その直後の2017年6月14日のBIE総会で、アメリカのミネソタが2022/23年開催の「認定博」開催に手を挙げることになる。

 ポーランドのウッジ、アルゼンチンのブエノス・アイレスもこの年の万博開催に立候補していたが、結局、2017年11月15日のBIE総会で、2023年開催予定の計画だったブエノス・アイレスが選定され、あの1984年ニューオリンズ万博以来、約40年ぶりのアメリカ開催の万博は今回は夢に終わった(その後、このブエノス・アイレス博は2019年のアルゼンチンの政権交代により白紙に戻ってしまっている)。

そして、BIE復帰後2回目のトライが今回の2027年認定博への立候補だったのだ。

開催地は前回と同じくミネソタである。

アメリカは、今回他国に先駆けて一番最初にBIEに申請を出した。2021年7月29日のことである。BIE規定では、最初の立候補からちょうど6ヶ月後が締め切りとなるので、今回は2022年1月28日中央ヨーロッパ標準時午後5時に締め切られた。

候補はずっとアメリカ1カ国のみの状態が続いたが、2022年に入って、タイが1月11日、セルビアが1月25日、スペインが1月26日、そしてアルゼンチンが1月27日に申請書提出と、締め切り間際での申請が相次ぎ、締切日を迎えてみると、5カ国で争われるという超激戦状態となった。

個人的には、アメリカがBIE復帰後2回目の挑戦であるし、今回は最初に一番手として立候補したということもあり、相当万全の体制で望んでいるのではないかと思っていた。

しかし、投票の経緯を見ると、最初の投票から3番目と相当弱い。一応第3ラウンドまで残ったものの、セビリアやスペインには遠く及ばなかった。

これをもって、アメリカがまたBIEや万博運動に消極的にならないかと心配だが、近い将来、まだ元気なうちになんとかアメリカでの万博を見てみたいものである。

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