2030年登録博の開催地はサウジアラビア・リヤドに決定
去る2023年11月28日、BIEは第173回総会を開催し、そこで、2030年の万博開催地としてサウジアラビアのリヤドを選出した。
この第173回BIE総会はBIE加盟国182カ国の代表が出席し、パリで開催された。
そして、そこで2030年開催予定の登録博(5年に一度開催の大規模な万博)の開催地についての投票が行われた。
上記、「BIE加盟国182カ国の代表が出席し」とたんたんと記述したが、じつは、<25>において2027年の認定博(登録博の間に一つだけ開催が認められている比較的小規模な万博)の開催地がセルビア・ベオグラードに決定したニュースをお伝えしたが、そのときのBIE加盟国は179カ国だった。それから半年で現在は3カ国増えて182カ国がBIEメンバーになったことになる。
その3カ国とはNorth Macedonia、Trinidad and Tobago、Federated States of Micronesiaだが、ともに2023年の新加入である。どうも、開催地決定の総会が行われるたびに、加盟国が増えている様子である。投票してもらいたい候補国がいろいろと動いているに違いない。
ちなみに、「愛・地球博」が開催が決定される前の1997年1月時点でBIE加盟国数は47カ国にすぎなかった。しかし、その後同年6月の投票までのわずか5ヶ月間で35カ国も増え、合計82カ国となった。
そしてその後の2010年上海万博招致時に急増し、現在は182カ国が加盟、ということになる。
「愛・地球博」決定時のなんと2倍以上の数である。
この数字の推移だけ見ると、万博はオワコンどころか、ますます世界各国が招致したいイベントになっているように見える。
実際、今回の2030年登録博も戦争が起こらなければ5カ国による招致合戦という歴史的にも最大級の激戦になっていたのである。
2030年万博の立候補国
さて、今回の2030年万博の招致合戦にはもともと5カ国(5都市)が参戦していた。
その5カ国(5都市)とは、
ロシア(モスクワ)
韓国(釜山(プサン))
イタリア(ローマ)
ウクライナ(オデーサ)
サウジアラビア(リヤド)
である。
この申請は2021年10月29日に締め切られた。サウジアラビアは締め切りの当日10月29日にぎりぎりで申請した。
<25>でもご紹介したが、それぞれの候補地の開催概要、テーマは下記のようなものであった。
ロシア
「人類の進歩:調和の世界のための共通ビジョン(Human Progress: A Shared Vision for a World of Harmony)」
開催場所:モスクワ
開催期間:2030年4月27日から10月27日
韓国
テーマ:「私たちの世界を変革し、よりよい未来に向けてナビゲートする」
(“Transforming Our World, Navigating Toward a Better Future”)
開催場所:プサン
開催期間: 2030年5月1日〜10月31日
イタリア
テーマ:「人々と地域: 再生、インクルージョンそしてイノベーション」
(“People and Territories: Regeneration, Inclusion and Innovation”)
開催場所:ローマ
開催期間:2030 年 5 月 1 日〜10 月 31 日
ウクライナ
開催テーマ:「ルネッサンス、テクノロジー、未来(Renaissance. Technology. Future)」
開催場所:オデーサ
開催期間:2030年5月1日から10月31日まで
サウジアラビア
テーマ:「変化の時代:先見の明のある明日のためにともに」
(“The Era of Change: Together for a Foresighted Tomorrow”)
開催場所:リヤド
開催期間: 2030年10月1日〜2031年3月31日
さて、この5カ国で競われることになったのだが、2022年2月24日にロシアがウクライナに侵攻し、戦争が始まった。
ロシア、ウクライナ、ともに2030年万博の候補地であった。
ロシアは立候補を取り下げ
しかし、昨年の2月に始まったロシアのウクライナ侵攻のあと、しばらくしてロシアは立候補を取り下げている。この件は、<4>でもご紹介した。
2022年5月23日のBIE(博覧会国際事務局)の発表によると、
「ロシア連邦は、BIE に対し、2030 年モスクワ国際博覧会の開催への立候補を自発的に取り下げる決定を通知した。 ロシア連邦のミハイル・ミシュスチン氏は、立候補を取り下げた理由を示し、同国が近い将来に博覧会を主催する候補になることへの希望を表明した。」
とのことである。しかし、BIEは、政治的中立を保つためか、この「立候補を取り下げた理由」については言及していない。
ウクライナも候補からはずれる
そして、2023年6月20日〜21日に第172回BIE総会が開催された。
この総会では2027年の認定博がセルビア・ベオグラードに決定した。
そして、同時に、この総会では、2030年開催の登録博について、3つの候補地が継続検討されることが発表された。この時に投票により、ウクライナは候補地から外されたのである。
3カ国による招致合戦
そして残る、韓国(プサン)、イタリア(ローマ)、サウジアラビア(リヤド)で2030年の招致合戦は戦われることとなった。
筆者の身の回りでは、積極的な招致活動を行っていた韓国(プサン)が有利と見る向きも多かったが、実際はたった一回の投票で大差をつけてサウジアラビア(リヤド)に決定したのである。
この投票においては、政府が任命した代表団を代表とする有資格かつ現加盟国により、一国一票の原則に基づいて、電子投票を用いた無記名投票で開催国が選出された。
サウジアラビアは第 1 回投票で 119 票を確保し、必要な 3 分の 2 の過半数を獲得し、開催地に選出された。
締め切りギリギリ当日に申請したサウジアラビアが開催国に決定したのである。
投票結果は下記の通りである。
韓国 – 29
イタリア – 17
サウジアラビア – 119
棄権 – 0
BIE事務総長のディミトリ・S・ケルケンツェス氏は
「BIEを代表して、サウジアラビアが2030年万国博覧会の開催国に選出されたことに心からお祝いを申し上げます。今後数年間、私たちはサウジアラビアと緊密に協力することを楽しみにしています」
と述べている。
2020年(開催は2021年)のドバイ万博に引き続き、2025年大阪・関西万博をはさんで、また2030年の万博は中東で開催されることになる。
2025年大阪・関西万博が、ドバイ、リヤドに負けない立派な万博となることを望むのみである。