アメリカ最初の万博
さて、前回<62>までは、1939/40年、そして1964/65年と2回にわたって同じ場所で開催されたニューヨーク万博の跡地であるフラッシング・メドウズ・コロナ・パークを訪れたときの話をご紹介した。
しかし、ニューヨークではもう一度万博が開催されている。
しかもマンハッタンのど真ん中で。
それは1853~54年のことだった。
1853年といえば、万博というものができてすぐの頃である。
世界最初の万博とされているのは、言うまでもなく1851年に開催されたロンドン万博である。この万博はロンドンのハイド・パークにクリスタル・パレス(水晶宮)という巨大な鉄とガラスの温室構造のパビリオンをわずか半年で建設し、開催したものである。
その後1853年5月12日から10月29日の会期で、アイルランドのダブリンで万博が開催された。
そして大西洋をはさんだニューヨークでも万博が開催されたのである。
この万博は1853年7月14日から1854年11月1日まで開催された。
場所は今もマンハッタンに残るブライアント・パークである。
ブライアント・パークの標識
Sign of Bryant Park
photo©️Kyushima Nobuaki
ブライアント・パークのマップ (2019)
Map of Bryant Park (2019)
photo©️Kyushima Nobuaki
今も市民の憩いの場であるブライアント・パーク
筆者が初めて「ブライアント・パーク」に行ったのは1987年のことであった。
ニューヨークにはその年の5月〜9月まで滞在した。
カリフォルニアでの大学院入学の前に、ニューヨーク・マンハッタンにあるコロンビア大学に語学留学させてもらったのである。
もちろん、その頃はその公園がニューヨーク万博の跡地とは全く知らなかった。
当時、その北側にある、カーブのデザインが美しいグレース・ビルディングの32階に会社のニューヨーク支社があったので、そこを訪れたのである。しかしその前に公園があったのは覚えていた。
グレース・ビルディング
Grace Building
グレース・ビルディング
Grace Building
photo©️Kyushima Nobuaki
「ブライアント・パーク」はタイムズ・スクエアから歩いてすぐ、5番街と6番街の間、40丁目と42丁目の間にあり、「ニューヨーク公共図書館」に隣接している。
ニューヨーク公共図書館入り口付近
Entrance of New York Public Library
photo©️Kyushima Nobuaki
ニューヨーク公共図書館入り口付近(2019)
Entrance of New York Public Library(2019)
photo©️Kyushima Nobuaki
ニューヨーク公共図書館内部
Inside of New York Public Library
photo©️Kyushima Nobuaki
ニューヨーク公共図書館内部
Inside of New York Public Library
photo©️Kyushima Nobuaki
ニューヨーク公共図書館内部
Inside of New York Public Library
photo©️Kyushima Nobuaki
そのブライアント・パークでニューヨーク万博が開催されたときには、十字架の形をして中央に大きなドームのある、ロンドン万博と同じ名前の「クリスタル・パレス」というメイン会場が建てられていた。
この土地は当時、今の「ニューヨーク公共図書館」が建っている場所にあった「クロトン給水所(クロトン・ディストリビューション・レゼボア)」にちなんで「レゼボア・スクエア」と呼ばれていた。
この万博では万博初となるタワー、高さ約107メートルの「ラッティング展望台」が「クリスタル・パレス」に隣接して建てられていた。
じつはこの「ラッティング展望台」は「レゼボア・スクエア」の42丁目の通りをはさんで北側に建てられていた。ということは現在まさにグレース・ビルディングがあるあたりだ。つまりなんと当時の筆者の会社のニューヨーク支社は1853~54年ニューヨーク万博跡地にあったのだった――。 (現在はすでにダウンタウンの方に引っ越している)
さて、ブライアント・パークは現在ではマンハッタンのミッドタウンにあるが、万博開催当時はダウンタウンから整備が始まって、このあたりが北へ向かっての開発の「北限」だったらしい。
そのため、この「ラッティング展望台」はまだ開発されていないマンハッタンの北方面も見渡せる貴重なタワーだった、ということだろう。当然まだセントラルパークなども整備されていない。(開園:1859年)
ウィリアム・カレン・ブライアント(1794~1878)はジャーナリストであり、著名な詩人であった。「セントラル・パーク」のアイデアや「メトロポリタン美術館」の創設にも中心的な役割を果たした。
そして、この「レゼボア・スクエア」は、その後1884年に彼の名前にちなんで「ブライアント・パーク」と改名され、今にいたるのである。
ちなみに、1851年ロンドン万博のために建てられた「クリスタル・パレス」はその後、ロンドン郊外のシデナムに移築され、80年以上存在したが、1936年に火災で焼失した。
一方、このニューヨークの「クリスタル・パレス」は、万博開催5年後の1858年には早々に火災で焼失してしまう運命だった。そして「ラッティング展望台」はさらに早い1856年8月30日にこれまた火災で焼失してしまったのである。
ということで、ブライアント・パークはアメリカの万博発祥の地、といえる。
そんなこともあり、筆者はニューヨークに行く時はだいたいこの万博ゆかりのブライアント・パーク近くのホテルに宿泊することにしている。
ホテルの部屋の窓からエンパイア・ステート・ビルディングが見える。
I can see the Empire State Building from my hotel room window.
photo©️Kyushima Nobuaki
ホテルの部屋の窓からエンパイア・ステート・ビルディングが見える。日によって照明の色が変わる。
I can see the Empire State Building from my hotel room window. The color of the lighting changes depending on the day.
photo©️Kyushima Nobuaki
ホテルの部屋の窓からエンパイア・ステート・ビルディングが見える。日によって照明の色が変わる。
I can see the Empire State Building from my hotel room window. The color of the lighting changes depending on the day.
photo©️Kyushima Nobuaki
コロナ騒動直前の2019年5月に訪れたときもそうだったし、今回もそうだった。
2021年10月にオープンしたグランド・セントラル駅横の展望台「サミット」からブライアント・パークとニューヨーク公共図書館を望む。
View of Bryant Park and the New York Public Library from the observation deck “Summit” next to Grand Central Station, which opened in October 2021.
photo©️Kyushima Nobuaki
2021年10月にオープンしたグランド・セントラル駅横の展望台「サミット」からブライアント・パークとニューヨーク公共図書館を望む。
View of Bryant Park and the New York Public Library from the observation deck “Summit” next to Grand Central Station, which opened in October 2021.
photo©️Kyushima Nobuaki
このあたりは、タイムズスクエアにも徒歩ですぐに行けるし、ブライアント・パーク近くにはホールフーズや紀伊国屋書店(この店は筆者が1987年当時滞在した時にすでに存在していた)もあり、便利だ。
ホールフーズ・マーケット 店の前にはクリスマス用の木が並べられている。
Christmas trees are lined up in front of the Whole Foods Market store.
photo©️Kyushima Nobuaki
紀伊国屋書店
Books Kinokuniya
photo©️Kyushima Nobuaki
今回は11月後半だったので、ブライアント・パークではもうクリスマス・マーケットが始まっていた。
公園の中には、多くの店が仮店舗を開き、アイススケート場も設置され、多くの人たちで賑わっていた。
ブライアント・パーク。アイススケートリンクもある。
Bryant park. There is also an ice skating rink.
photo©️Kyushima Nobuaki
ブライアント・パーク。回転木馬もある。
Bryant Park. There’s also a carousel.
photo©️Kyushima Nobuaki
ブライアント・パークの様子
Bryant Park
photo©️Kyushima Nobuaki
ブライアント・パークの様子
Bryant Park
photo©️Kyushima Nobuaki
ブライアント・パークの標識
Sign of Bryant Park
photo©️Kyushima Nobuaki
ブライアント・パーク。公園向こうの建物がニューヨーク公立図書館。
Bryant Park. The building behind the park is the New York Public Library.
photo©️Kyushima Nobuaki
ブライアント・パーク。公園向こうの建物がニューヨーク公立図書館。
Bryant Park. The building behind the park is the New York Public Library.
photo©️Kyushima Nobuaki
ブライアント・パーク。ゲーテの像。
Bryant Park. Statue of Goethe.
photo©️Kyushima Nobuaki
ブライアント・パーク。公園向こうの建物がニューヨーク公立図書館。
Bryant Park. The building behind the park is the New York Public Library.
photo©️Kyushima Nobuaki
<62>でご紹介したサンクスギビングのパレードの向こうに見えるのがブライアント・パーク。
Bryant Park can be seen beyond the Thanksgiving parade introduced in <62>.
photo©️Kyushima Nobuaki
<62>でご紹介したサンクスギビングのパレードの向こうに見えるのがブライアント・パーク。
Bryant Park can be seen beyond the Thanksgiving parade introduced in <62>.
photo©️Kyushima Nobuaki
ブライアント・パークの普段の様子・夜景(2019)
Bryant Park, Normal Night Scene(2019)
photo©️Kyushima Nobuaki
ブライアント・パークの普段の様子・夜景(2019)
Bryant Park, Normal Night Scene(2019)
photo©️Kyushima Nobuaki
ブライアント・パークの普段の様子・夜景(2019)
Bryant Park, Normal Night Scene(2019)
photo©️Kyushima Nobuaki
ブライアント・パークの普段の様子(2019)
Bryant Park(2019)
photo©️Kyushima Nobuaki
ブライアント・パークの普段の様子(2019)
Bryant Park(2019)
photo©️Kyushima Nobuaki
この公園の名前となったウィリアム・カレン・ブライアントの銅像も変わらず設置されている。
ウィリアム・カレン・ブライアントの像
Statue of William Cullen Bryant
photo©️Kyushima Nobuaki
この公園の中にはレストラン「ブライアント・パーク・グリル」があり、なかなか美味しい食事を提供してくれる。
ブライアント・パーク・グリル
Bryant Park Grill
photo©️Kyushima Nobuaki
ブライアント・パーク・グリル内部。窓の外はブライアント・パーク。
Inside Bryant Park Grill. Bryant Park outside the window.
photo©️Kyushima Nobuaki
そして、公園から6番街を隔てたあたりには、「クロトン・レゼボア・タバーン」という、「クロトン給水所(クロトン・ディストリビューション・レゼボア)」にちなんだ名前のレストランがあり、これまたなかなかいい感じのインテリアの中で肉厚のホタテなど美味しい料理を楽しむことができるところなのである。筆者は今回の視察でこの店を2回訪れた。
クロトン・レゼボア・タバーン
Croton Resevoir Tavern
photo©️Kyushima Nobuaki
クロトン・レゼボア・タバーンの店内
Inside of Croton Resevoir Tavern
photo©️Kyushima Nobuaki
万博はニューヨーカーの生活に今も影響を与えつづけているのである。