「皇居三の丸尚蔵館」
今年(2024年)の夏はとても暑そうである。
今日はまだ6月中旬というのに日差しはすでに真夏のそれを思い出させる。
そんな中、皇居を訪れた。
東京駅から10分ほど歩き、大手門を通って皇居に入る。
入る前には手荷物検査が行われていた。
数多くの外国人も見受けられたが、列はそんなに長いわけではない。
皇居の敷地内に入ると、江戸城の名残である大きな石垣など独特のおごぞかな雰囲気を味わうことができる。
そんな雰囲気を楽しみながら少し歩くと、右手に「皇居三の丸尚蔵館」がある。
この三の丸尚蔵館は平成5年(1993年)、「宮内庁三の丸尚蔵館」として開館した。
その元になったのが、上皇陛下と香淳皇后からの、代々皇室に受け継がれた品々約6,000余点の御寄贈だった。
そして、2019年(令和元年)からは施設拡充のため新館の建設に着手し、2023年、その一部が完成したとのこと。
今回は、完成したこの新館の一部で開催されている展覧会を観覧する。
ちなみに、三の丸尚蔵館は令和5年10月1日付で、管理・運営が宮内庁から独立行政法人国立文化財機構へ移管され、現在にいたっている。
さて、「皇居三の丸尚蔵館」である。
一部は完成して、立派な建築物となっている。ちなみに設計は日建設計、施工は清水建設とのこと。
まだ工事中のフェンスで囲まれた部分もある。
できて1年ちょっとということで、三の丸尚蔵館の内部はまだ新しい。
三の丸尚蔵館は完全予約制であり、2週間ほど前にネットで予約した。
三の丸尚蔵館の左手には売店があり、そこに立ち寄った観光客が、当日は入れないのかと係員に尋ねている様子を見かけた。
「開館記念展 皇室のみやび ー受け継ぐ美ー」
我々はQRコードによる入場券をスマホで提示して入館する。
最近では一般的になってきた入場方法である。
今回は展示室2室による展覧会(展示室2→展示室1)である。
今回の展覧会は
「開館記念展 皇室のみやび ー受け継ぐ美ー」
「第4期:三の丸尚蔵館の名品」(2024年5月21日~ 2024年6月23日)
である。
国宝・伊藤若冲『動植綵絵』、これまた国宝の狩野永徳『唐獅子図屏風』など素晴らしい作品に圧倒される。
一般の展覧会に比すと展示作品数は少ないものの、かなり見応えがある。
そんな中、筆者の目を引いたのは「展示室1」の一番最後に隠されているかのように展示されていた一つの作品である。
並河靖之『七宝四季花鳥図花瓶』
その作品とは、並河靖之の『七宝四季花鳥図花瓶』。
並河靖之(1845-1927)は、京都を中心に活躍した日本の七宝家であり、あの濤川惣助(1847-1910)をライバルとし、「二人のナミカワ」と評された人物である。
<16>「重要文化財の秘密」展 東京国立近代美術館 ではこのライバル濤川惣助についてご紹介した。
「重要文化財の秘密」展に出展されていた濤川惣助の作品『七宝富嶽図額』(1893年作。2011年重要文化財指定。)は1893年シカゴ万博に出品されたものであった。
さて、もうひとりのナミカワである並河靖之の作品も万博に出展されていた。
まず、1876年フィラデルフィア万博に出品し、メダルを獲得している。また1878年パリ万博、1889年パリ万博、1900年パリ万博でも数々の賞を受賞しているのである。
今回三の丸尚蔵館の展覧会に展示されている作品『七宝四季花鳥図花瓶』は1900年パリ万博に出品された作品である。
展示横のパネル解説によると、下記のようにある。
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漆黒の七宝を背景に四季折々の花々と樹木、そのなかを自由に飛び交う野鳥が極めて繊細な有線七宝により表されています。図様のみを際立たせるように、花瓶全体を絵画的空間とした画期的な作品で、1900年のパリ万国博覧会に出品された並河靖之の最高傑作です。
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その四季が描かれた作品を360度方面から見えるように展示がされており、観覧者は、パリを驚かせたであろうこの傑作の四季を味わうことができる。
皇居の中でパリ万博に思いを馳せた1日となった。