<4>「フィンランドのNATO加盟」のニュースに万博を想う①

2030EXPO
1900年パリ万博のフィンランド館 Finnish Pavilion, 1900 Paris World Exposition

フィンランドのNATO加盟のニュース

フィンランドがNATOに加盟するというニュースが報じられたのは2023年4月4日のことだった。同日付で、フィンランドが北大西洋条約機構(NATO)の31番目の加盟国となった、ということである。すでにブリュッセルのNATO本部前の各国国旗掲揚のポールにフィンランドの国旗が掲げられたという。

フィンランドのNATO加盟を後押ししたのは、もちろんロシアの脅威である。ロシアが2022年2月24日にウクライナ侵攻を始めて以来、ロシアと1340キロメートルにわたる長い国境を構えるフィンランドではロシア脅威論が高まった。以前はNATOへの加盟には積極的とは言えず、中立を是としていたフィンランドだったが、ロシアのウクライナ侵攻を契機に、大きな方針転換をしたのだ。

ロシアがウクライナ侵攻を始めた大きな理由は、ロシアがNATOの東方への拡大に懸念を覚えていたこと、だったが、皮肉なことに、逆にロシアによる侵攻が、フィンランドのNATO加盟という形となってNATOの東方拡大を後押しした結果となった。

ロシアとウクライナと2030年登録博

さて、ロシアとウクライナ、といえば、実は、両国とも2030年万博への立候補国であった。

万博は5年に一度開催される大規模な万博である「登録博」と、2つの登録博の間に一つだけ開催可能な、比較的小規模の「認定博」の2種類がある。
2030年に予定されているのは大規模な「登録博」である。その5年前の2025年に開催される「登録博」はもちろん「大阪・関西万博」である。

その2030年の「登録博」の開催権をめぐっては5カ国が手を挙げており、激しい招致合戦が繰り広げられていた。

その5カ国とは、ロシア(開催都市・以下同:モスクワ)、韓国(プサン)、イタリア(ローマ)、ウクライナ(オデーサ)、サウジアラビア(リヤド)である。

ちなみに、ロシアは2021年の4月29日に2030年登録博への立候補レターをBIEに提出した。
これをもって、ロシアが2030年登録博への最初の立候補国、ということになった。
立候補時のロシアの2030万博の開催テーマは、

人類の進歩:調和の世界のための共通ビジョン(Human Progress: A Shared Vision for a World of Harmony)

というもので、開催場所は首都モスクワ、開催期間は2030年4月27日から10月27日という計画だった。
このテーマを見て、複雑な思いを持つ方も多いのではないだろうか。
私としては、ロシア(ウラジーミル・プーチン大統領)がその後ウクライナに対して起こした軍事行動は非常に遺憾であるが、少なくともロシア内で万博を推進していた人たちは純粋な気持ちでこのテーマを考え、このテーマを追求したいと思っていたのではないか、というふうに思いたい、というのが正直なところである。

すでに述べたように、ロシアは2030年万博への最初の立候補国だった。

BIEの規定では、最初の立候補が行われた日から6ヶ月後がその万博の立候補の締め切り日となる。

すなわち、2030年万博については、ロシアが立候補した2021年4月29日から6ヶ月後、の2021年10月29日のCET(Central European Time=中央ヨーロッパ時間)の午後5時が締切時間、ということになった。

その後、韓国(釜山)が2021年6月23日に、イタリア(ローマ)が10月7日に、ウクライナ(オデーサ)が10月15日に立候補した。

2030年登録博は、このロシア、韓国、イタリア、ウクライナの4カ国で争われると多くの人が思ったその締め切り当日の10月29日、サウジアラビア(リヤド)が、立候補する旨のレターをBIEのディミトリ・ケルケンツェス事務局長に手渡し、結局、立候補国は5カ国となった。

ロシアは立候補を取り下げ

しかし、昨年の2月に始まったロシアのウクライナ侵攻のあと、しばらくしてロシアは立候補を取り下げている。

2022年5月23日のBIE(博覧会国際事務局)の発表によると、

「ロシア連邦は、BIE に対し、2030 年モスクワ国際博覧会の開催への立候補を自発的に取り下げる決定を通知した。 ロシア連邦のミハイル・ミシュスチン氏は、立候補を取り下げた理由を示し、同国が近い将来に博覧会を主催する候補になることへの希望を表明した。」

とのことである。しかし、BIEは、政治的中立を保つためか、この「立候補を取り下げた理由」については言及していない。

継続しているウクライナの2030年万博招致活動

一方、ウクライナは、今日現在時点で招致活動を継続している。
2030オデーサ万博のためのホームページも存在しているし、今年の3月24日には、BIEのEnquiry Mission(調査団)がウクライナを訪問し調査業務を終了したという。

ウクライナサイドは、なんらかの動きで、戦争が早期に集結すれば、まだまだ開催する余地は残っていると考えているのだろうか。

そうなれば、戦争からの復興を記念する、また新しいコンセプトの万博となるだろう。

ちなみに、すでに述べたように、ウクライナが立候補したのは、立候補締切日の2021年10月29日を間近に控えた、10月15日のことだった。

開催テーマは「ルネッサンス、テクノロジー、未来(Renaissance. Technology. Future)」。
開催場所オデーサ(当時はまだ日本ではオデッサ、という発音表記だった)。
開催期間2030年5月1日から10月31日まで
という計画である。

ちなみに、2030年登録博の開催国については、2023 年 11 月に開催される第 173 回 BIE 総会で、1 国 1 票の原則に基づいて、BIE 加盟国によって匿名投票によって選出される予定である。

 

今回は、フィンランドと万博のことを書くつもりだったが、ロシアとウクライナの両国が2030年登録博に立候補していたことから、そちらの状況を主にご紹介することになってしまった。

次回の②では、いよいいよフィンランドと万博の関係を見ていくことにしたい。

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