東京・汐留の「旧新橋停車場」内のミュージアム
夏休みもいよいよ終盤だが、東京近郊で気軽に行ける万博関連施設として、東京・汐留の「旧新橋停車場」内の「お〜いお茶ミュージアム」と「お茶の文化創造博物館」をご紹介したい。
名前でわかる通り、伊藤園が開設したものである。
なお、「鉄道歴史展示室」も引き続き併設されている。
この施設は、今年2024年5月1日にオープンしたもので、中にはカフェもあり、ちょっと一休みもできる。
伊藤園と大谷翔平選手
伊藤園は、1933年シカゴ万博で始まったアメリカ・メジャーリーグのオールスターゲームの常連になったドジャース・大谷翔平選手と「お〜いお茶 グローバルアンバサダー」として契約した。
ということもあり、中に入ると、大谷選手をラベルに使用したペットボトルの自動販売機や、大谷選手のカットアウトなどもありかなりの大谷色が感じられる。
この施設は入ったところが売店とカフェになっており、左奥に「お〜いお茶ミュージアム」、右奥に「お茶の文化創造博物館」が位置している。
「お〜いお茶ミュージアム」は比較的こじんまりとしたスペースで、無料で楽しむことができる。
一方、「お茶の文化創造博物館」は入場料が大人500円。
中には、展示のほか、「お茶シアター」もあり、映像も楽しめる。
お茶の歴史や伝播、飲み方・作り方などがわかるようになっている。
謎のドリンク「茶ポンス」
さて、ここで筆者が注目したのは、カフェで販売している「茶ポンス」(650円)である。この「茶ポンス」という飲み物は今まで聞いたことも、もちろん飲んだこともなかった。
メニューには、
とある。
さらに、メニューの横に置いてあった「茶ポンスって、何?」という解説シートには次のようにある。
果汁や砂糖・炭酸水などを加えた飲み物「ポンチ(punch)」のこと。
お茶と万博の歴史
お茶と万博の歴史は、最初に江戸幕府が出展した1867年パリ万博から始まっている。
このパリ万博にはあの渋沢栄一も現地参加しているものであるが、このとき日本は国としてグランプリを受賞している。
この時は、皇室の陶器や青銅美術に加え、幕府が展示した約100点の浮世絵などによって、ジャパン・プレゼンテーションがおこなわれたが、同時に「茶店」が出展されていた。
この展示は清水卯三郎という人物が企画したもので、おかね、おすみ、おさとという3人の芸者が人気を集めたのである。
高橋邦太郎『チョンマゲ大使海を行く』(人物往来社)によると、次のようにある。
それ以来、輸出促進や、茶の文化の紹介ということもあり万博ではお茶関連の展示、茶店の出展が行われてきた。
具体的に把握できるものだけでも、次の万博がある。
1867年パリ万博
1876年フィラデルフィア万博
1893年シカゴ万博
1904年セントルイス万博
1915年サンフランシスコ万博(パナマ・太平洋万博)
1926年フィラデルフィア万博
1933年シカゴ万博
「茶ポンス」と神宮栄蔵
ちなみに、「茶ポンス」の解説にでてきた神宮栄蔵というのは、日系人画家で、1919年にテキサス・サンアントニオに住みつき、1926年に茶園を開園した人物とのことである。
その同年、アメリカ独立150周年を記念して開催されたフィラデルフィア万博において、日本茶館でこの「茶ポンス」を提供した、ということになる。
アメリカ人の嗜好にあわせて、飲みやすい、すっきりしたドリンクを作ったのであろう。
それから約100年が経つ。
この「茶ポンス」は、なるほど今まで味わったことのない味である。
すっきりとしつつ甘みがある。日本茶の風味は相当程度減じられているが、夏に万博に思いを馳せながら飲むには最適の飲み物といえよう。