上海万博「英国館」を設計したヘザウィック・スタジオ
ヘザウィック・スタジオについては、<13>と<14>の「ヘザウィック・スタジオ展」でご紹介した。
このスタジオはトーマス・ヘザウィック(1970年、英国生まれ)が創設したスタジオで、2010年上海万博の英国館を設計したところである。
上海万博といえば、「ベターシティ、ベターライフ」をテーマとして開催され、入場者数は「万博史上最多」の7308万4400人(それまでの最多は1970年大阪万博の6421万8770人、会場面積は「万博史上最大」の523ヘクタール、参加国・国際機関数も「万博史上最多」の190カ国・56国際機関を誇った、万博史上数々の記録を打ち立てた万博である。
この万博でヘザウィック・スタジオは英国館を設計したが、それは「種子聖殿」といわれ、その独特なデザインは来場者の目を引くのに十分だった。
それぞれの先端にさまざまな植物の種子を埋め込んだ6万本以上のアクリル棒の集合体であるこのユニークなパビリオンは、「パビリオンカテゴリーA」(大型パビリオン)の「パビリオンデザイン」部門で金賞を受賞した。
また、最近東京で「麻布台ヒルズ」がオープンしたが、その低層部のデザインもこのヘザウィック・スタジオが手がけたものだ。
さて、今回のニューヨーク視察では、そのヘザウィック・スタジオの2つの作品をみることができた。
『ヴェッセル(Vessel)』
一つは、すでに、前回2019年の来訪時にすでに遠くから見たことのある『ヴェッセル(Vessel)』である。
昨年の「ヘザウィック・スタジオ展」の解説には
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・・・インドのラージャスターンにある階段井戸、とりわけその繰り返される階段と踊り場の視覚的効果に着想を得て、《ヴェッセル》は、合計約2,500段、154個の階段のまとまり、80箇所の踊り場、地上16階の登る構造体となった。人々は上に登って開発中の新しいエリアを見下ろし、ハドソン川とマンハッタンの眺望も楽しむことができる・・・
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とあった。
このヴェッセルのある「ハドソン・ヤード」は、1930年代のロックフェラー・センター以来最大の開発プロジェクトが展開されているところで、2019年3月に第1フェーズがオープンしたばかりの新しい地域だ。
『ヴェッセル』以外にも2020年3月には西半球で最も高いといわれている屋外展望台「エッジ」がオープンした。
筆者もエッジの屋外展望台に行ってみたが、屋外に突き出た展望台はなかなか迫力があり、ここから眺めるマンハッタン周辺の景色は素晴らしいの一言である。
今回訪問時は『ヴェッセル』の上に登ることはできなかったが、1階部分には入ることができ、その異様ともいえるデザインを内部から楽しむことができた。
『リトル・アイランド』
ハドソン・リバー沿いのハドソン・リバー・パークに2021年にオープンしたこの『リトル・アイランド』もヘザウィック・スタジオの作品である。
2021年5月オープンということで、前回(コロナ前の2019年)訪問時にはまだできていなかったので、今回が初めての訪問となった。
写真ではみていたが、実際に実物を見てみるとやはりとてもユニークなデザインだ。
よくこんなデザインを思いつき、それが認められて実現したものだ、と思う。
中に入ると、そこは小さな島の上に作られた公園であり、その中には展望デッキや円形劇場も設置されている。
訪問したのが朝早い時間だったこともあり、ジョギングを楽しむ人たちの姿も見えた。
それにしても、コロナ禍で4年間来ない間に、新しい施設がどんどんと完成・オープンしている。
ニューヨークという街の絶えず進化していくエネルギーを改めて感じるのであった。