<15>サラ・オレイン・カルテット(Billboard Live TOKYO)

2005「愛・地球博」
Billboard Live TOKYO

Billboard Live TOKYO

4月某日、六本木の森美術館《東京シティビュー》の「ヘザウィック・スタジオ展」で想定以上の時間を過ごした筆者はそのまま六本木のミッドタウンに向かった。

そこで友人2人と会い、食事をしてから4階のBillboard Live TOKYOに向かう。

ここは友人の一人が法人会員になっているところで、たまに招待してもらえることがある。

これまでも、大橋純子、大黒摩季、徳永英明、杏里などのコンサートを見る機会に恵まれた。

やはりたまにはライブはいい。

Billboard Live TOKYO 入り口付近サイン
Billboard Live TOKYO Entrance Sign

Sarah Àlainn Quartet〜You Must Believe in Spring〜

今晩は「サラ・オレイン・カルテット」である。

タイトルは

Sarah Àlainn Quartet〜You Must Believe in Spring〜

というもので、ホームページの解説には、


サラ・オレイン・カルテット

癒しの歌声、圧倒的なパワーのポップス & ジャズ、華麗なるヴァイオリン、多彩なサラワールドで国内外のファンを魅了し続けるサラ・オレインの、ビルボードライブ3会場ツアーが決定。昨年デビュー10周年を迎え、多彩な魅力で活躍の場を広げる彼女が、今回はクリヤ・マコト(Pf)、早川哲也(Ba)高橋信之介(Dr)と日本ジャズ界を牽引する敏腕トリオとともにオンステージ。唯一無二のパワフルな歌声とヴァイオリンの音色に魅了される一夜に酔いしれて。

とある。

さて、サラ・オレインである。

彼女のオフィシャル・ウェブサイトのプロフィールによると、


オーストラリア出身。ヴォーカリスト、ヴァイオリニスト、マルチプレイヤー、作詞作曲家、コピーライター、翻訳家、テレビ・ラジオパーソナリティー。英語、日本語、イタリア語、ラテン語を操るマルチリンガル。音が色で見える共感覚者。ジャンルを問わず、幅広く活動する表現者。

とあり、その下にくわしいプロフィールが書いてある。

ご興味のある方はぜひ直接オフィシャル・ウェブサイトのプロフィールを読んでいただきたいが、
シドニー大学をHigh Distinctionで卒業したあと、東京大学に留学したという才女である。
また、NHK「おとなの基礎英語」でレギュラー出演したり、いろいろなテレビ番組のテーマ曲などを手掛けたりの活躍ぶりであることがわかる。

また、歌声に関しては、


3オクターブを超えるその声には「f分の1ゆらぎ」と呼ばれる、癒しの効果が含まれることが科学的に実証される。

ということで、ライブで聴くのが非常に楽しみである。

席に案内されると、ステージから2番目の、向かって少し右手のちょうどいい距離のテーブル席だった。開演は20時。

Billboard Live TOKYO

やはりなかなか素晴らしい。
今回はカルテットということで、ピアノ、ベース、ドラムの3人+サラ・オレインという構成で、サラ・オレイン自身もバイオリンを弾いたりしていろいろと変化も楽しめる。

筆者は基本、ピアノ、ベース、ドラムの構成は好みなので、相当に楽しめた。

知っている曲も多かった。

昔、劇場で見た映画『バグダッド・カフェ』の『コーリング・ユー』など、彼女の高く美しい声にぴったりの曲などは聞いていて気持ちがいい。この『バグダッド・カフェ』については、この映画に出てくる曲を集めたCDも筆者は購入しており、また違った歌声で聞けてよかった。

『春よ、来い』と愛・地球博「Love The Earth」

また、松任谷由美さんの『春よ、来い』も演奏された。

やはり、生きていると、こうやって普通に過ごしていても(?)、万博とは無関係ではいられない。

『春よ、来い』といえば、2005年に開催された「愛・地球博」のプロジェクト「Love The Earth
のコンサートで歌われた名曲である。

今も残る「愛・地球博」の公式ホームページには、この松任谷由美さんの出演した「Love The Earth」の様子が写真とともに紹介されている。

以下、引用する。


Love The Earth」で松任谷由実さん熱唱
閉幕直前の3連休は初日から駆け込み客殺到

閉幕前3連休の初日となった(9月)23日、愛・地球博会場は、朝から駆け込み客が大勢詰めかけました。開場が通常より40分早められた午前8時20分、4カ所の入場ゲートには3万5000人余が待機。会場では、思い出作りやフィナーレイベントを楽しむ来場者の姿が目立ちました。入場者は、最終で23万4031人となりました。

また、EXPOドームでは、愛・地球博最大の音楽イベント「Love The Earth」最終公演が午後7時から行なわれ、松任谷由実さんがアジア各国のアーティスト4人と共演。コンサートの中継が行われる愛・地球広場は、午前中から場所取りのレジャーシートで芝生が埋まりました。

ステージでは、松任谷さんが、数々のヒット曲を熱唱。「Love The Earth」のために書き下ろした「Smile again(スマイル・アゲイン)」を、4人が日本語・英語・中国語・韓国語の4カ国語で歌い継ぐ例を見ない試みに、会場は熱気の渦。松任谷さんは「一体感が感じられる感動的なステージとなり、一生の思い出に残ります」。「ユーミンの迫力に圧倒されました」と、観客は総立ちになって拍手を送りました。

「Love The Earth」は、「人々が自然や地球とのつながりを再認識しよう」というメッセージを音楽という「共通言語」で伝えるプロジェクトで、これまで5回の公演が行われ、その精神は2010年上海万博へ受け継がれます。(9月23日)

この「Love The Earth」というプロジェクトは、上記引用最後のパラグラフに解説があるが、財団法人2005年日本国際博覧会協会の事業として企画されたもので、立川直樹氏が総合プロデューサーを、エリック・クラプトンがエグゼクティブ・ミュージック・コンサルタントを務め、世界的チェロ奏者ヨーヨー・マ、ソプラノ・ボーカリストのサラ・ブライトマン松任谷由美、東京2020パラリンピック開会式にも登場した布袋寅泰、東京2020オリンピック開会式にも登場したMISIA等の皆さんが参加した豪華なものだった。

この、閉幕間際(「愛・地球博」の閉幕日は9月25日であった)の9月23日に行われた松任谷由美さんのコンサートは大催事場「EXPOドーム」でおこなわれ、「愛・地球広場」のPanasonic製の大画面に中継された。

仕事の一環とはいえ、そのときに「EXPOドーム」の場にいられた筆者は幸運であった。

このコンサートは、amin(中国・ヴォーカル)、イム・ヒョンジュ(韓国・ヴォーカル)、ディック・リー(シンガポール・ヴォーカル)、シュイ・クゥ(中国・二胡)という日本以外のアジアからの4人のアーティストとともに5人で共演し、「Love The Earth」の理念を体現するものであった。

このコンサートの中で、『Smile again』とともに、個人的に印象に残っていたのがこの『春よ、来い』であった。これは、コンサート内でもイム・ヒョンジュにより歌われたが、アンコール曲として最後にも全員で歌われ、このコンサートのフィナーレを飾った。

ちなみに、この時の曲目や詳細はこちらのHPに紹介されている。

2005年といえばすでに18年前になってしまったが、この曲を一曲聴いただけであの頃にすっと連れていかれる感じが、音楽のもつ力であり魅力なんだろうとあらためて感じる。

坂本龍一さんと万博

さて、Billboardの「サラ・オレイン・カルテット」に戻ろう。

今年3月28日、坂本龍一さん(1952 – 2023)がお亡くなりになられたばかりなので「追悼」ということもあったのか、『戦場のメリークリスマス』(”Merry Christmas Mr. Lawrence”)も演奏された。

坂本龍一さんと言えば、もちろんYMOのメンバーであるが、筆者が大学生の頃、YMOは一大ブームとなっていた。『イエロー・マジック・オーケストラ』や『増殖 X∞MULTIPLIES』など何度聞いたかわからないほどだ。

しかも、坂本龍一さんは万博にも関係している。

美術手帖のインタビューには、

「・・・1970年の大阪万博の際に、作曲家の武満徹がプロデュースした鉄鋼館に展示されていた彫刻家のフランソワ・バシェの音響彫刻や、ハリー・ベルトイアの楽器のことを思い出したのです。・・・」というくだりが出てくる。

1970年大阪万博の鉄鋼館に訪れていたらしい。

また、1985年つくば科学博では、1985年9月15日(閉幕の9月16日の1日前)に、当時世界最大を誇ったソニーの巨大モニター「ジャンボトロン」(25m×40m、2000インチ)の前で、RADICAL TV庄野晴彦氏と原田大三郎氏によるビデオ・パフォーマンス・ユニット)とともに伝説的なパフォーマンス『TV WAR』を披露した。コンセプトは浅田彰さん

いろんな戦争の映像も登場する画期的なパフォーマンスで、当時はかなりの評判となったのを記憶している。この万博は「科学技術博覧会」だったが、科学技術の持つ「負の側面」も認識させられるパフォーマンスだったと思う。

1990年大阪花博では、「ひかりファンタジー 電力館」(電気事業連合会)に参画されている。これはライド型パビリオンで、坂本龍一氏作曲の音楽『THE FANTASY OF LIGHT & LIFE』に乗ってひかりが飛び回る異空間を「ルミナー号」に乗って体験するものであった。総合プロデュースは石井幹子さん

そして、2025年大阪・関西万博でも企画に参加されていた。

2022年4月の発表によると、8人のテーマ事業プロデューサーが主導するパビリオン「シグネチャーパビリオン」のうち、福岡伸一氏が担当する「いのち動的平衡館 I am You」パビリオンでのイベント企画で坂本龍一氏のMR(ミクスト・リアリティ)コンサートが企画されていた。

協会ホームページによると、下記のようにある。


[ねらい]
生命をテーマとしたコンサートやライブ演出を行い、
すべてが一つのいのちのように一体となった空間に浸ることで、
I am Youのコンセプトを体感する

[概要]
生命をテーマとした坂本龍一プロデュースのコンサートを行う。
現実世界の形状にホログラムの演出を重ね合わせるMR(Mixed Reality)
を利用。本人がまるでそこにいるかのような映像演出と、その他の照明効果を
掛け合わせ、生き物たちと演奏が互いに呼応し合うような
心地の良い一体感を醸成する。

[開催場所]
大催事場

残念ながら開催2年前にプロデューサーが逝去されてしまった今、この企画をどう実現するのか、関係者たちは知恵を絞っている最中に違いない。

ふたたびBillboard

さて、ふたたびBillboardの「サラ・オレイン・カルテット」に戻ろう。

六本木にちなんでか『六本木心中』のような歌もはさみながら、コンサートは大盛り上がりで終了した。今日が「千秋楽」ということだった。

Billboardの会場では、ずっとステージ背面は黒いカーテンで閉められているが、最後のアンコールでは、突然そのカーテンが開けられ、六本木の夜景が一望できる、という仕掛けになっている。

カーテンの開け放たれたまばゆい六本木の夜景を眺めながら、
ヘザウィック・スタジオから松任谷由美、坂本龍一といった人たちの万博との関係に想いを馳せ、
サラ・オレインの声に含まれるという「f分の1ゆらぎ」の癒しの効果を実感しつつ、
この日も充実した一日を終了したのであった。

Billboard Live TOKYO

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